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【クリニック監修】「プロペシアで初期脱毛」は本当? その真相は?
【プロペシアで初期脱毛の真相】AGA治療薬「プロペシア(主成分:フィナステリド)」で初期脱毛が起きるというウワサは本当でしょうか?「初期脱毛」とはどのような現象でしょうか?またプロペシアにはどのよう副作用があるのでしょうか?ウワサの真相に迫ります。
このページの監修者のご紹介

医療法人社団ウェルエイジング
Dクリニック福岡(旧城西クリニック福岡)
チーフ(看護師) 大野 ふみ(おおの ふみ)
経歴
2005年に看護師として入職。看護業務に従事したあと、Dクリニック福岡(旧城西クリニック福岡)のチーフスタッフとしてクリニック運営にも携わるようになる。
看護師の知識と経験を活かし、正しい医療情報の提供と、患者さまに寄り添った温かみのある対応を心掛けている。クリニックスタッフと積極的に意見交換を行い、患者さまに居心地良く感じていただくための接遇や院内の雰囲気づくりに注力している。また、それぞれのスタッフが力を発揮できるよう育成にも力を入れている。
AGA治療薬「プロペシア」で初期脱毛は起きるのか?
男性型脱毛症(AGA/MPHL)の治療薬「プロペシア」をご存じですか?
プロペシアはミノキシジルとともに、臨床の現場でもよく用いられている医薬品です。
ところで、「プロペシアを使用すると初期脱毛が引き起こされる」というウワサを見聞きしたことはありませんか?
本当にプロペシアで初期脱毛が起きるのでしょうか?
そもそも、初期脱毛とはどのような症状で、初期脱毛が起きたときは、どのように対処すればよいのでしょうか?
ここでは、AGA治療薬「プロペシア」の作用と、「初期脱毛」について解説します。
プロペシアによる初期脱毛(1) 「プロペシア」の基礎知識
「プロペシアによる初期脱毛」について知る前に、まずは「プロペシア」の基本情報をおさらいしておきましょう。
プロペシアの主成分は「フィナステリド」
プロペシアはMSD社が製造・販売する医薬品で、主成分は「フィナステリド」です。
フィナステリドは「5α-還元酵素阻害薬」に分類される成分で、その名の通り「5α-還元酵素(5α-リダクターゼ)」という酵素の働きを阻害する作用があります。
5α-還元酵素は、男性ホルモン「テストステロン」に作用する酵素です。テストステロンは5α-還元酵素が作用すると、より活性の高い男性ホルモン「DHT(ジヒドロテストステロン)」に代謝されます。
男性ホルモン受容体(アンドロゲンレセプター)から出る“毛母細胞を刺激する物質”
毛包の深部にある「毛乳頭」には「男性ホルモン受容体(アンドロゲンレセプター)」があり、DHTが男性ホルモン受容体に結合すると、毛母細胞を刺激する物質が分泌されます。
髭や体毛部分でDHTが男性ホルモン受容体に結合すると、毛母細胞の”増殖を促す物質”が分泌され、髭や体毛が濃くなります。
一方、前頭部や頭頂部では、毛母細胞の増殖を”抑制する物質”が分泌されます。その結果、男性型脱毛症(AGA/MPHL)の症状が進行するのです。
プロペシア(主成分:フィナステリド)を服用すると、5α-還元酵素のはたらきが阻害されて、DHTの生産が抑制されるため、男性型脱毛症(AGA/MPHL)の進行を遅延させることが可能になります。
ちなみに、商品名の「プロペシア(propecia)」は、英語の慣用句「pros and cons(長所と短所、賛否両論)」の「pro(ポジティブという意味)」と、「alopecia(脱毛症)」の「pecia」を組み合わせてつくられた言葉です。(※1)
(参照)
医薬品インタビューフォーム 「プロペシア錠」
(※1 プロペシアの名前の由来は第15版(2018年)より参照)
プロペシアは処方箋医薬品
プロペシアは日本でも承認されていて、製造・販売されています。また、プロペシアのジェネリック医薬品(後発医薬品)も10数社から発売されています。
しかし、いずれも劇薬指定の「処方箋医薬品」ですので、入手するためには医師の発行する処方箋が必要です。したがって、頭髪治療専門クリニックなどの医療機関を受診して、医師の診察を受ける必要があります。
なぜ、わざわざ医師の診察を受ける必要があるのでしょうか?
それは、後述するように、プロペシアにはいくつかの副作用を引き越す可能性があるからです。
使用する人がプロペシアの禁忌ではないか確認して、安全な使用法を指導し、もし副作用が発現したとしてもいち早く対応できるように、医師の指導と観察が不可欠なのです。
プロペシアによる初期脱毛(2) 「初期脱毛」とは?
さて、「初期脱毛」とは何でしょうか?
男性型脱毛症(AGA/MPHL)の治療に興味があって、インターネットの情報を検索していると「初期脱毛」というキーワードにたびたび出会うかもしれません。
男性型脱毛症のヘアサイクル
「初期脱毛」を知るためには、まず「ヘアサイクル(毛周期)」について理解しておく必要があります。
毛髪は「ヘアサイクル」という成長の周期にしたがって、発毛→成長→脱毛(抜け毛)を繰り返しています。
この周期が整っている場合、日々の抜け毛は平均100本以内で、約10万本ある頭髪全体ではフサフサ感が保たれています。
<健康なヒトの毛髪のヘアサイクル(毛周期)>
・成長期(2〜6年)
毛母細胞が増殖して毛髪をつくっている時期
・退行期(2〜3週間)
成長が不活発になり、退縮する時期
・休止期(3〜4か月)
成長が完全に止まり、脱毛する時期
しかし、男性型脱毛症(AGA/MPHL)を発症すると毛母細胞の増殖が抑制され、その結果、ヘアサイクルが乱れてしまいます。
「成長期」が極端に短くなり、すぐに「退行期」→「休止期」へと移行します。
毛髪の長さや太さは「成長期」の期間にほぼ比例しているので、「成長期」が短くなると毛髪は短く、細いままになってしまいます。
また、「休止期」から「成長期」へと移行する毛包が減少し、あらたな発毛が抑制されます。つまり、毛髪の本数が少なくなり、前頭部や頭頂部では、やがて毛髪のほとんど生えていない部位も拡がっていくのです。
「初期脱毛」は、ミノキシジル使用の治療初期に起こる
ここで、AGA治療薬の成分「ミノキシジル」について見てみましょう。
男性型脱毛症(AGA/MPHL)の人がAGA治療薬「ミノキシジル」の使用をはじめると、ミノキシジルの作用で毛母細胞や毛乳頭細胞の増殖が促進され、「休止期」のまま停滞していた毛包が「成長期」へと移行するようになります。
<ミノキシジルの効果>
・毛母細胞・毛乳頭細胞の増殖を促進する。
・毛包のミニチュア化を抑制する。
・ヘアサイクルの「休止期」の毛包を、「成長期」へと移行させる。
・ヘアサイクルの「成長期」の期間を延長させる。
ミノキシジルの作用によって毛母細胞が「成長期」へと移行するとき、あらたな発毛が起きているわけですが、新しい毛髪が生えてくると、先に生えていた古い毛髪は、押し出されるようにして抜けてしまいます。
このような、ミノキシジルの使用を開始した初期に起きる脱毛を「初期脱毛」といいます。
初期脱毛が起きると、「使用した薬が合わないから、毛髪が抜けたのではないか?」と勘違いして、ミノキシジルの使用を中断してしまう人がいるようです。しかし、初期脱毛があるということは、ミノキシジルが効果を発揮していることの証拠でもあるので、そのまま継続して使用するべきでしょう。
初期脱毛は、あらたな発毛への通過儀礼なのです。
なお、ミノキシジルについては、城西クリニック福岡の頭髪コラムにも詳しい記事があります。ぜひ、ご覧ください。
プロペシアによる初期脱毛(3) プロペシアで初期脱毛は起きるのか?
前述のように、ミノキシジルを使用すると初期脱毛が発現することがあります。
では、プロペシアでは、初期脱毛は起きないのでしょうか?
結論から言うと、プロペシアで初期脱毛は起こりません。
それは、ミノキシジルとフィナステリド(製品名「プロペシア」)とでは、作用機序がまったく違うからです。
フィナステリドと同じ5α-還元酵素阻害薬である「デュタステリド(商品名「ザガーロ」・グラクソ・スミスクライン社から販売)」も、同様に初期脱毛は発現しないといわれています。
したがって、「プロペシアを使用すると初期脱毛になる」というウワサは、根拠のない都市伝説であるといえます。
ミノキシジルとプロペシアを併用すると
しかし、なぜ「プロペシアを使用すると初期脱毛になる」というウワサが広まったのでしょうか?
もしかすると、ミノキシジルとプロペシアを併用したときに起きた初期脱毛を、プロペシアの副作用だと勘違いしたのかもしれません。
AGA治療専門クリニックなどでは、ミノキシジルとプロペシアの併用療法を行うところもあります。その場合、本来なら医師から初期脱毛についての指導があるはずですので、勘違いする人は少ないでしょう。
しかし、個人輸入などで入手したミノキシジルやフィナステリドを我流で使用した場合、初期脱毛についての正しい知識がなく、勘違いすることはあるかもしれません。
いずれにしろ、プロペシアでの初期脱毛は心配する必要ありません。
プロペシアによる初期脱毛(4) プロペシアの副作用について
プロペシアによる初期脱毛の心配はありませんが、しかし、プロペシアにも副作用があります。
ここで、プロペシアの副作用について確認しておきましょう。
肝機能障害
プロペシアの使用によって、肝機能に障害が現れる場合があります。
そのため、肝機能障害のある人へのプロペシアの使用はリスクがあるとして、添付文書にも「慎重投与」と記載されています。
また、プロペシアを使用している場合には、定期的に肝機能検査などを実施して、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの数値の変動がないかモニタリングする必要があります。
性機能に関する障害
プロペシアの使用によって、リビドー(性欲)減退や勃起機能不全をはじめ、射精障害、精液量減少、男子不妊症・精液の質の低下(精子濃度減少、無精子症、精子運動性低下、精子形態異常)などの性機能に関する副作用が発現する場合があります。
また、睾丸痛を生じることもあります。
プロペシアを服用していてこれらの症状が現れた場合には、すぐにプロペシアの服用を中断したうえで、なるべく早くAGA治療専門クリニックや内科などを受診して相談をするべきでしょう。
プロペシアによる初期脱毛(5) プロペシアの処方はAGA治療専門クリニックで
プロペシア(主成分:フィナステリド)は、ミノキシジルやデュタステリド(商品名「ザガーロ」)とともに、日本皮膚科学会も推奨するAGA治療薬です。
プロペシアでは初期脱毛は発現しませんが、肝機能障害や性機能不全などの副作用が引き起こされる可能性もあります。
また、プロペシアは処方箋医薬品であるため、入手するには医師の発行する処方箋が必要です。
プロペシアによるAGA治療を希望するのであれば、AGA治療専門クリニックを受診して、医師に相談するのがよいでしょう。
もし、あなたがプロペシアによるAGA治療を希望しているのであれば、Dクリニック福岡(旧城西クリニック福岡)にご相談ください。
無料カウンセリングも実施しております。
「Dクリニック福岡(旧城西クリニック福岡) 無料カウンセリングフォーム」
「Dクリニック福岡(旧城西クリニック福岡) 初診来院予約フォーム」
また、プロペシアなどのAGA治療薬については、城西クリニック福岡の頭髪コラムにも詳しい記事があります。ぜひ、ご覧ください。
【まとめ】
「プロペシアを使用すると初期脱毛が引き起こされる」というウワサの真相について、ご理解いただけたでしょうか?
「初期脱毛」とは、AGA治療薬「ミノキシジル」の使用を開始した初期のころに、ヘアサイクルが改善されることで、新しい発毛に伴って古い毛髪が抜けてしまう現象のことです。
ミノキシジルとプロペシア(主成分:フィナステリド)とは作用機序が異なるため、プロペシアで初期脱毛が発現することありません。
プロペシアとミノキシジルの併用療法を行っている場合には初期脱毛が起きることもありますが、それはミノキシジルの作用によるものです。
プロペシアで初期脱毛は発現しませんが、肝機能障害や性機能不全などの副作用が現れることがあります。
プロペシアによるAGA治療を行いたい場合には、AGA治療専門クリニックなどで医師の指導・観察を受けながら行いましょう。
注:記事の内容は、効能効果または安全性を保証するものではありません。
サイトの情報を利用し判断・行動する場合は、医師や薬剤師等のしかるべき資格を有する専門家にご相談し、ご自身の責任の上で行ってください。