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【クリニック監修】AGAの発症に大きく関わる「5αリダクターゼ」とはいったい何?
AGA発症に大きく関与するのが、私たちの体内に存在する5αリダクターゼという「還元酵素」と呼ばれる物質の1つです。5αリダクターゼを抑制することで、AGAの発症を抑制することが可能になるのか、解説します。
このページの監修者のご紹介

医療法人社団ウェルエイジング
Dクリニック福岡(旧城西クリニック福岡)
チーフ(看護師) 大野 ふみ(おおの ふみ)
経歴
2005年に看護師として入職。看護業務に従事したあと、Dクリニック福岡(旧城西クリニック福岡)のチーフスタッフとしてクリニック運営にも携わるようになる。
看護師の知識と経験を活かし、正しい医療情報の提供と、患者さまに寄り添った温かみのある対応を心掛けている。クリニックスタッフと積極的に意見交換を行い、患者さまに居心地良く感じていただくための接遇や院内の雰囲気づくりに注力している。また、それぞれのスタッフが力を発揮できるよう育成にも力を入れている。
5αリダクターゼはAGA発症の元凶
5αリダクターゼとは
5αリダクターゼは、人体に存在する還元酵素の一種です。
「テストステロン」という男性ホルモンは、成長期において男性らしい骨格や筋肉の形成や精神的な変化など、男性の心身の成長に不可欠なホルモンです。
5αリダクターゼは、そのテストステロンの働きをさらに高める作用があります。
5αリダクターゼは、テストステロンをより強力な男性ホルモン「DHT(ジヒドロテストステロン)」へと代謝します。
DHTは、男性ホルモンですから、それ自体は何も困った存在ではありません。
しかし、DHTが毛乳頭細胞に存在する「アンドロゲンレセプター」と結合することで、毛乳頭細胞から脱毛因子が放出されると、脱毛を促進し発毛や育毛を阻害してしまいます。その結果、ヘアサイクルが乱れ、抜け毛が増えて薄毛が進むという、髪の毛に関しては、まことにありがたくない作用を持っているのです。
5αリダクターゼは体のどこに存在するのか?
5αリダクターゼには、Ⅰ型とⅡ型があります。
Ⅰ型の5αリダクターゼは、ほとんどの体毛の皮脂腺に存在します。
皮脂の分泌が多い脂性肌の人は、Ⅰ型の5αリダクターゼが高活性である可能性が考えられます。(※参照1)
Ⅱ型の5αリダクターゼは、頭髪や、髭、腋毛、スネ毛、陰毛などの毛乳頭細胞に多く存在します。
DHTは毛乳頭細胞の「アンドロゲンレセプター」と結合することで、頭髪においては脱毛因子を、それ以外の髭や腋、スネなどにおいては発毛因子を放出するため、頭髪では脱毛を、それ以外の部分では発毛や育毛を促進するようになります。
髭や体毛が濃い人や、前頭部や頭頂部の薄毛が進んでいる人は、Ⅱ型の5αリダクターゼが高活性である可能性が考えられるようです。
また、Ⅱ型5αリダクターゼの方が、Ⅰ型5αリダクターゼよりもDHTへの代謝能力が高いことも分かっています。
(※参照1|福岡大学 審査学位論文 「十味敗毒湯の尋常性痤瘡改善作用とその作用機序に関する研究」)
5αリダクターゼと遺伝
5αリダクターゼの活性の高さは、人によって異なり、その傾向は遺伝することが分かっています。
5αリダクターゼの活性に関する遺伝は、「優性遺伝」によるものです。
両親とも持っていなければ発症の確率はゼロとなりますが、父親か母親のいずれか一方がこの遺伝子を有する場合、優性遺伝であれば必ず子供に遺伝します。
しかし、この遺伝子が引き継がれても、薄毛の発症をしない場合もあります。)
AGAの発症原因は、遺伝がすべてではありませんが、遺伝要因を見過ごすことはまずできません。家族や親せきにAGAを発症している人がいるなら、注意しておく、くらいに思っておくとよいでしょう。
5αリダクターゼを抑制する
AGAの発症には5αリダクターゼが関与しています。
ということは、5αリダクターゼの作用を抑制できれば、AGAの症状が改善されるということになります。
現在、国内で承認されているAGA治療薬に使われる成分には「ミノキシジル」「フィナステリド」「デュタステリド」の3種類があります。
このうち、5αリダクターゼを抑制する作用があるのは「フィナステリド」と「デュタステリド」です。
フィナステリド
「フィナステリド」はⅡ型5αリダクターゼを抑制します。
フィナステリドは、もともと前立腺肥大症の治療薬として開発されました。前立腺肥大症と男性型脱毛症の原因に、5αリダクターゼが関わっていることがわかっていたために、後にAGA治療薬として転用されました。
フィナステリドは、Ⅱ型5αリダクターゼの働きを抑制することで、DHTへの変換を抑制するという作用があります。それにより、DHTが妨げていた毛母細胞の活動を再び活性化させ、AGAの進行を抑制することができるのです。
その抑制効果について、日本皮膚科学会から調査結果が公表されています。
フィナステリドの内服効果について、効果を得た人の割合は
内服1年⇒58%
内服2年⇒68%
内服3年⇒78%
と、高い結果を得ています。
(参照|日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症における診療ガイドライン2017年版」)
フィナステリドを主成分とするAGA治療薬で有名なのが「プロペシア」です。
近年、フィナステリドの特許権の有効期間が終了したため、各製薬会社から続々とジェネリック医薬品が発売されています。
デュタステリド
「デュタステリド」は、Ⅰ型・Ⅱ型両方の5αリダクターゼを抑制します。
デュタステリドも、前立腺肥大症の治療薬として開発され、AGA治療に転用された薬です。
フィナステリドがⅡ型5αリダクターゼしか抑制しないのに対して、デュタステリドはⅠ型・Ⅱ型両方の5αリダクターゼを抑制します。
海外の臨床試験では、デュタステリドとフィナステリドを、半年間服用するという比較試験において、デュタステリド0.1mg、0.5mg服用群の方が、発毛量が約30%多かったという報告があります。(※参照2)
デュタステリドを主成分とするAGA治療薬は「ザガーロ」です。現在は特許権の有効期間中であるため、ジェネリック医薬品は発売されていません。
(※参照2|ザガーロ カプセル0.1mg、0.5mg 「添付文書」)
食事やサプリメント
「5αリダクターゼを阻害する作用がある」と言われる栄養素や食べ物があります。
即効性は望めませんが、副作用のリスクもありませんから、安心して継続できます。
もちろん医薬品のような、はっきりとした効果が実感できるレベルではありませんが、「チリつも」精神で、日々の食事やサプリメントなどにも気を配るのも良いでしょう。
ノコギリヤシ
ノコギリヤシというのは、ヤシの一種で主にアメリカからメキシコの湾岸地域で見られる植物です。
ノコギリヤシの果実は、昔から前立腺肥大の症状を抑える目的で使用されてきました。5αリダクターゼの働きを抑制する働きがあるとも言われ、現在でも男性用のサプリメントなどに使用されています。
フィナステリドは、「ノコギリヤシの果実エキスの成分を研究して化学合成した」という説があります。北米のネイティブアメリカンがノコギリヤシを常用しており、彼らに薄毛が少なかったために研究された、という話もあります。しかし、真偽の確認できる文献はなかなか見つからず、どこまでが本当か不明ではありますが、ノコギリヤシが注目されているのは間違いないようです。
ハコヤナギやスギナなどのように、民間薬として受け継がれてきた植物が、後の研究によって医薬品として使用される例もあります。今後、自然界に生息するものから発毛剤として期待できるものが見つかる可能性もあるかもしれませんね。
(参照)
国立研究開発法人 医薬基盤研究所(NIBIO)「ノコギリヤシ(Saw palmetto)の有効性および安全性について」
ダイアモンドオンライン「薄毛治療薬でEDになる!?AGA薬にまつわるウソ・ホント」
亜鉛
亜鉛は、ミネラルの一種で、細胞分裂や新陳代謝には欠かせないものです。
髪の毛は90%以上がケラチンというタンパク質でできています。
亜鉛が多く含まれる食品
・カキ
・レバー
・チーズ
・卵黄
・うなぎ
・納豆
・鶏モモ肉
・ホタテ
・アーモンド
・そば粉
・干しエビ
・のり
・落花生 など
実は亜鉛は吸収率の悪い栄養素という特徴があります。食事で摂取してもその全てが吸収・活用されるわけではありません。
また、亜鉛は取り過ぎると、鉄や銅など他の栄養素の吸収が妨げられてしまうことがありますから、取り過ぎも良くありません。
亜鉛のサプリメントもありますので、こうしたものを上手に活用するのも1つのてでしょう。
アロエ
昔から、火傷の際の塗り薬として知られるアロエですが、アロエに多く含まれる「アロイン」という成分には、抗菌・抗炎症作用や保湿作用があります。
頭皮にトラブルがあって脱毛している場合は、アロエから摂れる原液を頭皮につけるのが良いという説もあるようですが、肌に合わない場合もあるので、注意が必要です。
(5αリダクターゼを抑制する説もあるようですが、信頼できる研究論文などの記述が見つからないため、本コラム執筆時において偽は不明です。)
イソフラボン
豆腐、豆乳、納豆などの大豆製品に含まれるイソフラボンは、女性ホルモンのエストロゲンと構造が似ていることから、女性ホルモン様の作用が期待できると言われています。イソフラボンは、特定の腸内菌によって、エストロゲンよりも高い活性を持つ「エクオール」に代謝され、腸より吸収されることがわかっています。(エクオールを作ることができる腸内細菌(エクオール産生菌)は、日本人の約40%程度の人が持っていると言われています)
エストロゲンにはヘアサイクルの成長期を延長する働きがあるため、イソフラボンにも似た効果が期待できると考えられています。
5αリダクターゼを抑制するなら専門クリニックで
フィナステリド・デュタステリドは、共に医療用医薬品で医師の処方によって使用が可能です。
5αリダクターゼを抑制してAGA治療をするなら、薄毛治療を行っているクリニックで診察を受け処方してもらうことが、もっとも薄毛改善への近道ではないでしょうか。
まずはカウンセリングから
AGA治療専門クリニックでは、無料カウンセリングを実施しています。
AGA治療専門クリニックでの治療内容、治療にかかる費用などに不安や疑問のある人は、まず無料カウンセリングに足を運んでみるのも良いでしょう。
現在の貴方のAGAの進行状況のチェックをはじめ、大まかな治療メニューや治療費などを専門スタッフが説明してくれます。もちろん、不明な点は自分からどんどん聞いて確かめていきましょう。
治療に進むか否かを決めるのは、カウンセリングを受けた後でも問題はありません。
万一、カウンセリング後に治療をしないことを選択したとしても、もちろん構いません。
Dクリニック福岡(旧城西クリニック福岡)の無料カウンセリングはこちらからお申し込みができます。
「Dクリニック福岡(旧城西クリニック福岡) 無料カウンセリングフォーム」
(まとめ)
5αリダクターゼは、AGAの発症に大きく関わる物質です。
5αリダクターゼを抑制することで、AGAの発症を抑えることができますが、治療薬の組み合わせや使い方などは、クリニックで検査を受けることで、体質や年齢、進行具合などと合わせて選択することができます。
適切な治療でAGAの早期改善を目指しましょう。
AGAについては、こちらのコラムもご覧ください。
注:記事の内容は、効能効果または安全性を保証するものではありません。
サイトの情報を利用し判断・行動する場合は、医師や薬剤師等のしかるべき資格を有する専門家にご相談し、ご自身の責任の上で行ってください。